外国語勉強の副産物とは?

言語はその言語で扱われるコンテンツを得るためのインターフェースであり、端的に言えばそのコンテンツに興味や必要性がなければ、新しい言語を習得する理由は趣味以外にない。そして逆に、言語を習得する過程で、その言語で扱われるコンテンツに嫌でも触れることになる(たとえコンテンツに興味がなくて、語学を趣味で勉強していても)。

言語を勉強する際、例文や会話を基にして学ぶことが殆どだ。辞書の単語だけを覚えても、その言語を使えるようにはならないからだ。そして勉強に使用する例文や会話は、その言語圏の文化を背景としていることが多い。特に長文教材には、その言語圏の文化や風習、ビジネス習慣が垣間見えるものが多い。つまりあなたは、言語を学ぶ過程で、その言語圏の文化も習っているのだ。(私は、背景として文化を理解しておくことは言語をマスターする上でも非常に重要であると思っている。)

つまり、外国語を学ぶことは異文化に触れるという側面がある。英語学習は英語圏の文化に触れ、その価値観も学ぶと言うことだ。その勉強がたとえTOEIC対策の勉強だったとしても、この側面は常に存在する(TOEICには会話と長文読解が多いので、その端々で英語圏の、特にビジネス習慣に触れることになる)。

言語を学び始めた初期段階では、その言語を介して触れる新しい文化に対して違和感を覚えることもあるだろう。酷い時は、その文化や価値観は到底受け入れることは出来ないと感じることもあると思う。しかし不思議なもので、慣れてくると、ああそんなものか、と思うようになる。繰り返し触れることで、あなたの中の異文化に対する許容度が上がっているのだ。言語を習得する過程で、人は異文化に対してopen mindになり、より国際的に、よりマルチカルチャー的に、そしてよりリベラルな考え方をするようになる。結構当たっていると思うので、ちょっとあなたの身近な人を考えてみて欲しい。外国語を勉強している人のほうがそうでない人より、上記のような特性があるのではないか?ちなみに、これは言語習得のすばらしい副産物だと私は思っている。そしてこれは恐らく、外国語を学ぶ日本人についてだけ言える特徴ではない。

長期海外旅行やホームステイ、海外勤務でアメリカに住んだことがある方は、以下のことに対して思い当たることがあるかもしれない。ほぼ全てのアメリカ人は、英語という国際ビジネス語を操る。しかもnative English speakerなので、文句なしに英語は上手だ。しかし、個々のアメリカ人は必ずしもグローバルな視点を持っているわけではないし、アメリカ外の異文化に対して理解を持っているわけでもないし、リベラルな考えを持っているわけではない(厄介なことに、彼等自身の殆どはそれに気付いていないようである)。大抵のアメリカ人において言えることは、彼らの興味はアメリカ国内に終結し(良くて西ヨーロッパまで含む)、USドル以外の通貨のことをよく知らないし、パスポートを持っていない人も多く(生まれて一度も自分が生まれたstateの外で暮らした経験がない人もかなりいる)、そして彼らにとっての世界と言うのはアメリカを意味する。挙句の果ては、アメリカは世界で一番裕福で、世界で一番自由で、世界で一番幸せに人生が送れる場所だと思い込んで、それを大前提とした話しかたをすることがある。(実際そうなのかも知れないのだが、彼等は外を見ずに盲目的にそう思い込んでいる点が引っかかる)。ちょっと話が逸れた。言いたかったのは、英語という国際語を話すが、アメリカ人は異文化に対する許容度が低い人が多いということだ。そしてそれは恐らく、幸か不幸か真剣に外国語を学ぶ必要がなかったことが一因だと私は思う。

英語を学ぶとグローバルでマルチカルチャーな考え方が出来るようになるのは嘘ではないだろう。しかしそれは、アメリカ人の例で分かるように、英語を話す『能力』そのものがもたらすものではない。むしろ英語を学習する過程、もっと言うと外国語を学習してみようと言う意欲そのものが、あなたにグローバルでマルチカルチャーな視点を育んでくれる。

語学を勉強するのは語学力だけではなく、あなたの価値観を広げてくれる。あなたが今何歳でも遅いことはない。外国語の勉強を始めてみてはいかがだろうか。


- 今日のフレーズ
In the beginning was the Word, and the Word was with God, the Word was God. (始めにWordありき、Wordは神と共にあり、Wordは神であった。)
John(ヨハネ)による福音書の最初の文です。Wordの訳は色々あるみたいです。言葉、論理、理論、何れにせよこれはキリストの事を指していると言う解釈が主流のようです。たまに聖書由来の文章や、それをもじった文章に出会いますが、古典な語を使っていたり倒置が多かったりで、理解するのが大変です。(ちなみに、この文章のオリジナルは、たぶんギリシア語だったと思います)

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